労働保険とは、「労災保険」と「雇用保険」とを総称した言葉であり、保険給付は両保険で別個に行われていますが、労働保険料の徴収については、両保険は「労働保険」として、原則的に一体のものとして取り扱われています。
労働保険は、農林水産の事業の一部を除き、労働者を1人でも雇っていれば、その事業主は加入手続を行い、労働保険料を納付しなければならないことになっています。また、平成19年4月1日から石綿健康被害救済のための「一般拠出金」の申告・納付を労働保険料(確定保険料)と併せてすることになりました。
労働保険料は、毎年4月1日から3月31日までの1年間(「年度」といいます)を単位として計算され、その金額は、集計した年度中の賃金の総額[*1]に保険料率を乗じて算定されます。
その申告・納付の方法は、まず年度当初にその年度の概算の賃金に基づいた保険料を納めておき、年度末に賃金が確定したところで精算するという方法をとります。
したがって事業主は、新年度の概算保険料と前年度の確定保険料を同時に申告・納付する手続きが必要になります。これを「年度更新」といいます。この年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行わなければなりません。
料率はそれぞれ次のように定められています。
労災保険率は、事業の種類ごとに、業務災害及び通勤災害に係る災害率に応じ、労災保険率表により定められています。労災保険は全額事業主負担です。
石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるために徴収されます。料率は業種を問わず、一律0.02/1000です。(全額事業主負担)
労災保険(労働者災害補償保険)は、「業務災害」「通勤災害」等について、労働者やその遺族のために必要な保険給付を行います。(全額事業主負担)
「業務災害」とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることをいいます。この業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて働いていることが原因になって発生した災害に対して行われるものであり、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害である必要があります。
「通勤災害」とは、労働者が通勤により被った負傷、疾病、障害または死亡をいいます。この場合の「通勤」とは、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいいます。往復の経路を逸脱した場合には、逸脱またはその後の往復は「通勤」とはなりません。
正社員、契約社員、パート、アルバイト等雇用形態のいかんを問わず、全ての労働者が加入の対象となります。ただし、一人ひとり加入や脱退の手続きをするわけではなく、年に1回、対象期間中の賃金の総額と平均人数を申告することにより手続きを行います。
代表者が加入できる労災保険の制度を、「特別加入の労災保険」(特別加入制度)と呼びます。労働者1人以上を常時雇用し、労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託している中小事業主または法人の場合、その代表者は、特別加入の労災保険に加入することができます。また、労働者以外で事業主の事業に従事する方(事業主の家族従業員や、法人の場合は代表者以外の役員)も加入することができます。
雇用保険は、労働者が失業して給料をもらえなくなった場合、労働者の雇用の継続が困難となった場合に失業等給付を行います。
雇用保険の受給資格は次のいずれにも該当すること。
正社員、契約社員、パート、アルバイト等雇用形態のいかんを問わず、以下に該当する労働者はすべて加入の対象となります。
※原則、法人の役員は雇用保険に加入できませんが、兼務役員として、同時に従業員の身分を有する場合 は雇用保険に加入できることがあります。